Day 13|追いかけられる夢と逃げる夢の心理
──「逃げる夢は“弱さ”ではなく、心の防衛反応である」
■ 1. 追いかけられる夢は、最も多い“心の警報夢”
追いかけられる夢・逃げる夢は、
世界中で最も多く報告される夢のひとつである。
多くの人はこの夢を
「怖い夢」「悪い夢」「不吉な夢」
と感じがちだが、心理学的にはまったく違う。
この夢は
心が限界を超えないよう、自動的に鳴らす“警報装置”
として働いている。
つまり、追いかけられる夢を見るとき、
無意識はこう訴えている。
「今のやり方では、少し無理がある」
■ 2. 「追ってくる存在」は何を象徴するのか
追いかけてくる存在は、
実在の人物や出来事そのものではない。
それは多くの場合、
向き合うのを避けてきた“心理的テーマ”である。
代表的な象徴は以下の通り。
- 責任
- 期限
- 失敗への恐れ
- 他者からの期待
- 自己否定
- 過去のトラウマ
- 未完了の課題
- 感情(怒り・悲しみ・罪悪感)
夢はそれらを
「人」「怪物」「動物」「軍隊」「霊的存在」
といった形に変えて追いかけさせる。
重要なのは、
追ってくる存在が何かより、“逃げている構造”である。
■ 3. 逃げる行為は“生存本能として正常”
逃げる夢を見る人は、
しばしば「自分は弱いのでは」と感じる。
しかし心理学的には正反対。
逃げるという行為は
心が自分を守ろうとしている健全な反応。
- 追い詰められすぎている
- 心理的負荷が高い
- 休息や再調整が必要
- 正面突破が最適でない段階
こうしたとき、
心は「戦え」ではなく
「一度離れろ」と判断する。
逃げる夢は、
適応力の高い心ほど見やすいとも言われる。
■ 4. 逃げ方によって分かる“心の状態”
● 必死に走る
→ プレッシャーが強い
→ 余裕がなくなっている
● 足が重く進めない
→ 自己効力感の低下
→ 疲労の蓄積
● 隠れる
→ 直接対峙する準備がまだできていない
→ 一時的な回避が必要
● 誰かと一緒に逃げる
→ 支援を求める心
→ 共感・理解を必要としている
● 逃げ切れる
→ 問題が整理されつつある
→ 回復期に入り始めている
逃げ切れる夢は、
心理的には 回復のサイン であることが多い。
■ 5. 追いかけられる側から“追う側”へ変わるとき
同じテーマを扱う夢でも、
ある時点で構造が変わることがある。
- 逃げていた相手と向き合う
- 追ってくる存在が止まる
- 逆に自分が追う側になる
これは、
心理的成長が一段階進んだ証拠。
無意識が
「もう回避だけでなく、扱える段階に来た」
と判断したときに起きる。
■ 6. なぜ同じ“逃げる夢”を繰り返すのか
逃げる夢が繰り返される理由は単純。
現実で“状況”は変わっても、
心の扱い方がまだ変わっていないから。
夢は
「出来事」ではなく
“反応パターン”を修正しようとする。
- 無理をしすぎる
- 断れない
- 感情を後回しにする
- 完璧を求めすぎる
こうした癖が続く限り、
夢は形を変えて同じテーマを繰り返す。
■ 7. 追いかけられる夢が教える“本当のメッセージ”
この夢の本質的な問いは、いつも同じ。
「今、何から距離を取るべきか?」
「正面突破でなくてもいいのでは?」
「守るべきものは何か?」
逃げる夢は、
“向き合え”ではなく
“自分を守れ”というメッセージであることが多い。
■ 8. 今日のまとめ
追いかけられる夢・逃げる夢は、
- 弱さの象徴ではない
- 問題から逃げている証拠でもない
- 心の異常でもない
それは
心の安全装置が正常に作動しているサイン。
夢はこう語っている。
「今は、立ち止まるか、距離を取ることも“前進”だ」